治療方法について

精神科では、薬を使うことだけが治療ではありません。
学校や家庭での環境調整、生活上の工夫、心理的な支援などを行いながら、必要に応じて薬物療法、カウンセリング、治療用アプリなどを組み合わせていきます。 大切なのは、「症状をなくすこと」だけを目標にするのではなく、本人が困っていることを減らし、本来持っている力を発揮しやすくすることです。
当院では、お子さんの場合には年齢や学校生活の状況、大人の場合には仕事や家庭での困りごとなども含めてお話を伺い、その方に合った治療方法を一緒に考えていきます。

お薬による治療

症状によって日常生活や学校・仕事に大きな困りごとがある場合には、お薬による治療を検討することがあります。
お薬にはそれぞれ特徴があり、年齢、症状、生活リズム、これまでのお薬の使用経験などを考慮して選択します。
ここでは、当院で使用している代表的な治療についてご紹介します。

① コンサータ®(メチルフェニデート)

コンサータは、メチルフェニデートを有効成分とするADHD治療薬です。
不注意、多動性、衝動性などのADHD症状に対して使用されます。
1日1回の服用で作用が半日ほど続くことが特徴で、学校や仕事など、日中の活動時間帯の困りごとに対して有効なことがあります。PMDAの患者向医薬品ガイドでは、服用後の作用は約12時間持続するとされています。

このような方で検討されます

  • 授業中や仕事中に集中を保つことが難しい
  • 忘れ物やミスが多く、生活に支障がある
  • 衝動的な行動や発言に困っている
  • 日中のADHD症状が長時間続いている
  • 薬を1日何度も飲むことが負担に感じられる

コンサータは小児だけでなく、成人のADHDにも使用することができます。

気をつけたいこと

比較的よくみられるものとして、食欲の低下、体重減少、不眠、頭痛、動悸などがあります。
特にお子さんでは、食欲や体重・身長の変化を定期的に確認しながら使用します。
まれではありますが、依存性などにも注意が必要な薬です。そのため、医師の管理のもとで適切に使用することが大切です。
「薬を飲むのが少し心配」という方にも、どのような効果を期待して使用するのか、どのような点に注意するのかを説明したうえで治療を開始します。

② ビバンセ®(リスデキサンフェタミン)

ビバンセは、リスデキサンフェタミンを有効成分とするADHD治療薬です。
ADHDの不注意、多動性、衝動性などの症状に対して使用されます。
国内では小児期のADHDを対象とした薬で、他のADHD治療薬で十分な効果が得られない場合に使用することがあります。6歳未満および18歳以上については、有効性・安全性が確立していません。

このような場合に検討されます

  • 6歳以上18歳未満のADHDのお子さん
  • ADHDによる困りごとが続いている
  • 他のADHD治療薬を使用しても十分な効果が得られない
  • 現在のお薬では十分に対応できない症状がある
  • これまでのお薬とは異なる選択肢について相談したい

気をつけたいこと

食欲の低下、不眠、頭痛などがみられることがあります。
依存や乱用などのリスクについても注意が必要な薬であるため、医師が必要性を判断し、適切に管理しながら使用します。

③ エンデバーライド®

エンデバーライド(ENDEAVORRIDE)は、小児期のADHDを対象とした治療補助用の医療機器プログラムです。
スマートフォンやタブレットなどを使用して、ゲーム形式の課題に取り組みます。
一般的なゲームとは異なり、ADHDの治療を補助する目的で承認された医療機器で、課題の難易度が調整される仕組みなどが組み込まれています。2025年に国内で製造販売承認を取得し、2026年6月から販売が開始されています。

このような方で検討されます

  • 6歳以上18歳未満のADHDのお子さん
  • 不注意症状がみられる方
  • 環境調整や心理社会的な治療を行っても、症状による困りごとが続いている方
  • お薬以外の治療方法も含めて検討したい方
  • ゲーム形式の課題であれば取り組みやすい方

エンデバーライドは、薬の代わりとして単独で使用するものではありません。
学校や家庭での環境調整、心理社会的な支援、必要に応じた薬物療法などと組み合わせて、ADHDの治療を補助する目的で使用します。厚生労働省の資料でも、6歳以上18歳未満の患者を対象とした治療補助プログラムとして位置づけられています。

気をつけたいこと

1日5回、決められた時間に継続して取り組む必要があります。
ゲームや電子機器を使用する治療であるため、もともとゲームの使用時間をコントロールすることが難しい方などでは、適しているかどうかを慎重に検討する必要があります。

一人ひとりに合った治療を考えます

精神科の治療に「この方法が一番」というものはありません。
お薬が合う方もいれば、学校や家庭での環境調整によって生活しやすくなる方、心理的な支援やカウンセリング、治療用アプリなどを組み合わせることで取り組みやすくなる方もいます。
また、同じお薬でも、効果の感じ方や副作用の出方には個人差があります。

当院では、
「薬を使ったほうがよいのか」
「薬を使うならどのお薬が合いそうか」
「薬以外の方法はないのか」

といったことも含めて、患者さんやご家族と相談しながら治療方針を決めていきます。

「薬には少し抵抗がある」「まずは相談だけしてみたい」という場合でも構いません。
現在困っていることや、これまでに試してきた方法などをお聞きしながら、その方に合った治療方法を一緒に考えていきましょう。